平凡な会社員だったシロイさんがセキゼキさんと出会い平凡な日常を送ろうかとしていたのですが、その先には壮絶な戦いが待ち受けていて……。ブログ”wHite_caKe”の実話を元にコミック化した物語で描かれている風景は壮絶になっています。
城伊景季を原作に菊池直恵が描いていてコミックDAYSで隔週日曜日に連載中、単行本は現在1巻が発売されています。
「むしろウツなので結婚かと」のあらすじ
インターネット上でのチャットを通じて出会ったシロイさんとセキゼキさん。いつしか意気投合した2人はセキゼキさんの紹介で同じ会社に通う事になりました。徐々に仲を深めて恋人同士となった2人でしたが、しかしその会社が今でいう”ブラック企業”だという罠が待ち構えていました。
順風満帆だと思っていた2人の人生でしたが、セキゼキさんがうつ病にかかってしまい戦いの日々が幕を開けます。
「むしろウツなので結婚かと」の魅力と見所
ウツという身近な題材を扱った2人の苦難と苦闘の物語
「むしろウツなので結婚かと」は、うつ病介助者の視点から闘病生活を描く実話を基にした物語です。誰がいつなってしまってもおかしく無いウツという題材はもの凄く身近に感じてしまいます。誰もが身近な誰かがウツになってしまいシロイさんの立場になったり、自分がウツになってセキゼキさんの立場になったりしてしまうかもしれません。
作中に感情移入して、もしも自分がシロイさんの立場だったら周りの人にどんなことができるのか。逆にセキゼキさんの立場になってしまったら迷惑をかけずにいられるのか……と思うとスッキリしないというかモヤっとしたシコリが残ってしまうような印象深い漫画です。
解決するのに一番早いのは気がついた段階で病院に行く事なのですが、自覚症状のない、もしくは自分がウツだと思いたくない人間を病院に連れて行く事の難しさを同時に伝えているのも良いポイントだと持っています。
正直に言ってしまえば先述した通り、この話をすっきりとした面白い話だとは思いませんでした。それだけウツになってしまったセキゼキさんの思いは苦しいものですし、支えてきたシロイさんの辛い気持ちを考えると楽しいとは無縁でそれで良かったのだと思っています。
娯楽を目的とした漫画のように気持ちが良い充足感は得られないかもしれませんが、それでも1人でも多くの人に読んでほしいと思わせる話です。
リアルすぎるうつ病描写とその対抗策
実話を基にしているだけありその闘病生活と病んでしまっているセキゼキさんの様子はリアルそのもの。最終的に気持ちの問題は無事に解決して大丈夫なのだろうとわかっていても読んでいると心が痛みます。
更にはセキゼキさんを大切に思っていてなんとか助けようとしているシロイさんの行動が逆に彼を追い詰めてしまっているのも見ていて気持ちが伝わってくるので辛いとしか言いようがありません。良かれと思ってしているのに上手くいかないシロイさんもまた不憫な感じです。
そんな感じで作中では気持ちがすれ違ってしまう事もあるのですが、巻末には後から城伊さんが反省して実はこうした方が良いのではと感じた部分も書かれているので実際に周りの人間がうつ病になってしまった時にどう対応していったら良いのかを書いた参考書としてもオススメできます。
解決の希望は競馬にあり!?
辛くて苦しいウツとの戦いを描いた作品ですが、例え今が苦しくても未来に希望が待っていそうなのが救いです。
その鍵とされているのが二人のデートの風景として日本ダービーを戦った女傑ウオッカ。
牝馬(女の子)にして引退時にはトップタイの中央GⅠ競争7勝を誇り、牝馬として獲得賞金は最高額を稼ぐ(現在は他の馬に抜かれています)など歴史に名を残すような馬でした。
彼女とダイワスカーレットが当時3歳で最強牝馬の座を争っていた時代が描かれているのは人によってはなんだか懐かしい気持ちになるでしょう。
そんなウオッカも今年の4月に15歳にして亡くなってしまっているのがなんとも物悲しい感じです。
2人が希望を持ち続けられたキッカケとされているウオッカですが、冒頭で描かれた日本ダービーでGⅠ競争としては2勝目なのでその先にはまだまだ活躍が待っています。2人の苦難の日々にどう競馬が関わってくるのか、ウオッカが2人にとってどんな風に希望になっていくのが楽しみになると同時に色々と考えさせられてしまう漫画になっています。
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