『ブキミの谷のロボ子さん』は伊咲ウタ先生によるSF風ハートフルコメディで『電撃大王』にて連載中です。単行本は執筆現在(2018/10/1現在)既刊2巻が発行されています。
あらすじ
他人に合わせることができず
誰とも関わらず一人の生活を送っていた
上小杉惣介。
そんな彼の下に
アンドロイドの少女が届けられる。
「私は人とは何かを知りたいのです」
「そんなもの俺にわかるわけがない」
突然始まる同居生活!
果たして上小杉に平穏は訪れるのか!
感想
以前に取り上げた『現代魔女図鑑』の伊咲ウタ先生による新作になります。
前作もなのですが、人間の感情表現といった描写がものすごくうまいと感じます。登場人物たちはただそこに暮らしているだけなのになぜか物語に引き込まれていくという……。
この作中は2025年といういまよりも少しだけ未来なのですが、通信販売がドローンで配達していたり、人型でないロボットがアミューズメントのマスコットキャラをしていたりと少しだけテクノロジーは発達しているわりに街中があまり現在と変わっていないようなのが逆にリアルです。
とある理由により人間を拒絶して生きてきた28歳の青年、上小杉惣介のもとに送られてきたAPG25Rと名乗る女子中学生の見た目をしたアンドロイドの少女。人間とは何なのかを知りたいと求める彼女だったが人と関わらずに生きていたいと願う彼には果てしなく面倒くさいことだった。
そんな惣介が一人でいたいと願う理由がなんだか深刻で重たいのですが、傷ついてしまうのもわかるのでなんとも言えません。正しいことをしようとした結果、誰も間違ってないけど道としてはどこかで違ってしまったとは……。
ロボ子を送りつけてきた妹を含め、そんな原因をある意味作ってしまった家族とのエピソードが悲しすぎます。
人とは何なのかを一緒に知っていこうと求めるロボ子に振り回されてしまう彼の平穏はその来訪を機に徐々に打ち破られていくことになるのであった。
近所のお節介おばさんの林さんや地下アイドル活動を行っている山重あきほなどと言ったご近所関係もどこかにいそうな人ばかりです。
みんな悪い人じゃないと思うのですが、こじらせてしまっている惣介にはそんな周りが悪いようにしか見えてないようでついクズな行動もしてしまうという。
純真無垢なロボ子が幼い子供のように何にでも興味を示し、アイドル活動に自分探しの旅に出かけたりと積極的に動いていく中でどんどん成長していくのも見ものです。
そんな中で人間じゃないから当たり前なんですが、ロボ子が見せるアクロバティックすぎる動きが凄すぎるのがちょっと楽しいです。
ロボ子との同居生活の中で彼女に振り回されていく惣介も徐々に変わりつつあって、でもそんな自分と周りに苦しんでいるのがどうなっていくのか心配です。
ほのぼのとした日常の中で無愛想ながらも時折まるで人間のような表情を見せるロボ子と過去の経験から傷ついてしまった惣介が交流する中で二人は答えを見つけることはできるのか。
そんな小さな世界の物語がなんだか気になってしまいます。
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