もし巨大怪獣が日本に出現したらという”もしも”を描いたサバイバル漫画『怪獣自衛隊』の見所と感想をネタバレ込みで紹介します。作者はサバイバルデスゲーム漫画『BTOOOM!』の井上淳哉で企画協力に軍事や政治に詳しい白土晴一が携わっています。
防衛大学校を卒業して任官を控える女性自衛官見習いの防人このえが豪華客船でのクルーズ中に怪獣に遭遇し、騒動に巻き込まれていく物語。
巨大怪獣が現れて巡視艇や豪華客船を襲撃するという、実際にはありえないような嘘が大前提にあるにも関わらず、どこか現実的な面も持ち合わせているのが魅力的な作品です。
怪獣自衛隊の基本データ
作者:井上淳哉 企画協力:白土晴一
出版:バンチコミックス(新潮社)
コミックス:〜3巻(記事執筆現在)
怪獣自衛隊の見所と魅力
誰かを守るために戦う自衛隊の矜持
巨大怪獣や怪人が登場して人類の驚異になる作品の多くは対抗する”ヒーロー”が登場して撃退してくれるような特撮作品のような漫画だったりしますが、この作品にそういった”ヒーロー”は存在しません。
しいてあげるならばタイトルにもなっている自衛隊の怪獣対策班(=怪獣自衛隊)がヒーローという事になるのかもしれませんが、彼らは敵を倒すためのヒーローではありません。
武力を行使することはあっても、それは一般市民を怪獣の被害から守るためのもの。
このえが自衛官を志した理由も災害にあった時に自衛官が自分の身を顧みずに助けてくれたからと言う人々を守るための力によるものです。
幸か不幸か怪獣に襲撃されてしまった豪華客船『富嶽』に乗り合わせてしまったこのえが繰り広げる力だけじゃない戦いから目が離せません。
周囲を取り巻く人たちの葛藤に惹かれる
このえの祖母は自衛隊になることを反対しています。
自衛隊は軍隊で戦争の訓練をするところだから孫を危険な目に合わせたくないという祖母とこのえの自衛隊は市民を守るための組織だという意見は対立してしまいます。
どちらの感情が正しいと思った人も読み進めていくうちに納得のいく落とし所になっていると思います。
また怪獣に対抗するために国も葛藤を余儀なくされてしまいます。
富嶽の乗員乗客の安全を考えると一刻を争う状況なのですが、他国との軋轢を生んでしまうと悪い結果につながってしまいかねません。
そんな状況で決断を下す総理大臣や防衛大臣といった閣僚たち側の動きが妙にリアルで、現実の内閣がこんな事態に遭遇したら同じような雰囲気なのかもと思わされてしまう説得力があります。こうしたやりとりの中で責任を持つものの重大さが要所に現れていて、それもまた格好良く映ります。
怪獣自衛隊の感想まとめ
スーパーヒーローがいない世界で怪獣が実際に現れたらというパニック作品的な要素がありつつもただパニック作品に終始してしまうのでなく自衛隊とは何なのかを描こうとしているのは非常に好感が持てます。
主人公のこのえが特別な力を持たない普通の人間でありながら怪獣に立ち向かっていく戦いには心を動かされてしまいました。
3巻では怪獣に対抗するための自衛隊チームが発足し、このままじゃ終わらない怪獣との戦いは本格化していきます。スーパーパワーなどを持たない人間が恐るべき力を持った怪獣とどんな戦いを繰り広げていくのか気になる作品です。
コメント