明暗が分かれた2024年冬の実写化2作品 賛否両論の理由は「原作改変」だけじゃない!

 マンガ作品の実写化は原作再現の難しさから、批判が集まってしまうことも多くあります。2024年秋ドラマでも多くのマンガ作品が実写化されるなか、特に『その着せ替え人形は恋をする(着せ恋)』の内容には多くのツッコミが寄せられています。どうしてマンガの実写化は原作ファンから嫌われてしまうのでしょうか。

虚構の現実化という高いハードル

原作を忠実に再現するのは難しい

 しばしマンガ作品には現実世界に存在する黒髪や金髪ではなく、ピンクや緑といった奇抜な髪の色をしたキャラクターが登場します。また、高校生の役柄を成人済みの役者が演じる機会も多く、設定と実年齢が大きく乖離してしまうこともあります。

 そうした現実との違いを忠実に再現したときに生まれる、悪い意味で作りものっぽさがドラマとして浮いてしまうこともあるでしょう。実写版『着せ恋』を例に出せば、原作では小学生や中学生と見間違えてしまうほど幼い外見をしている「乾紗寿叶」(演:池田朱那)ことコスプレイヤーの「ジュジュ」が、ドラマだと普通の高校生にしか見えないため違和感がぬぐえないファンもいるようです。

 その点は実写版『ウイングマン』でも、ヒロインのひとり「アオイ」(演:加藤小夏)は本来の姿でシルバー(原作では水色)の髪色をしているため、現実感という意味では浮いています。そもそも異世界「ポドリムス」の住人であるという設定や、一般的なドラマよりも作り物めいた特撮作品という土壌から、現実的ではなくても許された感じでしょうか。

作品にのしかかるコンプライアンス問題

 また実写化作品として公開するにあたって、コンプライアンス問題が立ちはだかって原作の再現が難しくなってしまう場合もあります。実写版『着せ恋』2話では、原作にもあったヒロイン「喜多川海夢」(演:永瀬莉子)が、コスプレ衣装の採寸してもらうために「五条新菜」(演:野村康太)の自宅を訪れるエピソードが描かれました。採寸の際に素肌に近い状態で計測するのが好ましいため、新菜の心情を配慮した海夢は水着を使用します。

 ところが、原作では際どいビキニ形状だった水着が、コンプライアンスの問題かドラマでは布面積の大きいものに変更されました。この変更に「正しく採寸できないのでは?」と疑問視する声も多く、原作をパロディした成年向けビデオ作品のほうが出来が良いと指摘する声も見られました。

 ちなみに『ウイングマン』でも同様で、異世界からアオイが来たときのコスチュームが、原作よりも厚手で肌色面積も少なくなるように原作者の桂正和さんの手によって再デザインされています。

是非が問われる原作改変

 そして実写化ドラマでは一話ごとや全体的な構成を考えて実写版ではストーリーがあらためられることも多く、そうした原作改変も問題視されがちです。しかし、決して原作からストーリーを改変すること自体が問題となるわけではありません。

 例えば『ウイングマン』では、原作では中学生だった主人公の年齢が高校生に引き上げられ、舞台も現代となりスマートフォンといった原作の時代には存在しなかった機器も登場しています。しかし、そうした変更点が作品としての面白さに繋がっているため、視聴者から問題点として指摘されることはありません。具体的には舞台を現代に変更しながらも主人公「広野健太」(演:藤岡真威人)が熱中している作品のタイトルが当時のままなことで、原作以上に生粋の特撮ファンに仕上がっています。

 一方で『着せ恋』では、後に本心からの言葉ではなかったことを打ち明けるも、先述した採寸のシーンでひな人形造りに打ち込む理由を海夢から聞かれた新菜が「(他に後継ぎがいないから)しかたなく」であると答える展開が追加されました。その発言が海夢からコスプレイヤーたちへの感想を求められ、大切にしている「綺麗」という言葉を使うことを戸惑うなど言葉を大切にする五条が発するにしては安易すぎると疑問視される結果となりました。

良い改変と悪い改変

 同じ原作改変でもファンからの反応は正反対であり、必ずしも改変という行為が非難の対象となるとは限らないと言えます。なぜ差が出てしまうのかといえば、原作に対する理解度の違いと筋が通った改変か否かです。

 前者では「生粋の特撮オタクである」という健太の特徴が色濃く表れているのに対し、後者では新菜の「人形師への思い」がブレてしまっています。こうした登場人物の人となりや物語の本筋に対して真摯ではないような改変が目立ってしまうと、原作を大切にしているファンとの乖離が大きくなってしまい結果的に視聴者から失望されることになるのでしょう。

原作が伝えたいことの大切さ

 結局のところ、原作が伝えているテーマやキャラクター造形に対し誠実に向きあい、作品としての魅力が伝わるように物語を再構成していけば実写化作品でも成功するのでしょう。期待していたファンが落胆してしまうような実写化作品は多いものの、すべての実写化作品を「駄作」とひとくくりにしてしまうのも乱暴です。

 メディアによって方向性や立場が違い、原作を忠実に再現するのは難しいながら、アニメ化と比べて肩身が狭い実写化が復権するような大成功作が生まれ続ける日は来るのでしょうか。

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