アットホームで明るい家族のような職場です。 『ダンジョンの中の人』が隠れた良作すぎた!

ダンジョンの中の人

 ファンタジー作品の世界では、冒険者が迷宮の最深部を目指し、立ちはだかる困難を次々と打ち砕いていくのが定番です。とはいえ、ダンジョンそのものがどうやって生まれ、内部の宝物やモンスターがどのように生まれているのかは、往々にして謎のまま。作品によってはその理由に裏付けがあることもあれば、不思議な力で片付けられてしまうこともあります。

 今回は、そうしたダンジョンの成り立ちや関わっている人々を描いた2024年夏に放送されたアニメ『ダンジョンの中の人』を取り上げ、その感想と紹介をしていきます。放送時は見逃していたのですが、後から見始めると夢中になり、終盤では続編を希望せずにはいられない作品でした。

(C)双見酔 / 双葉社・製作委員会の中のひと
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『ダンジョンの中の人』って?

 声優さんを「○○(役名)の中の人」と呼んだりすることからも、「中の人」という単語は何かの裏方を指す意味合いが感じられます。『ダンジョンの中の人』の指す「中の人」も似たようなニュアンスで、ダンジョンの裏側を描いたお仕事もの的な雰囲気の作品です。原作の同題マンガは双見酔さんによって「webアクションコミック」(双葉社)で連載されています。

クレイとベルのボケツッコミコンビ

(C)双見酔 / 双葉社・製作委員会の中のひと

 同作の主人公「クレイ」(CV:千本木彩花)は、アンジェルグという街に住むシーフの少女で、ダンジョンの探索者として活動していました。彼女の師匠でもあり育ての父でもある人物がダンジョンで行方不明になり、クレイはずっと彼の行方を追い求めていたのです。

(C)双見酔 / 双葉社・製作委員会の中のひと

 ある日の探索で、彼女は10層あるうちの9層まで到達したダンジョンで、管理者を務める少女「ベイルヘイラ・ラングダス」(CV:鈴代紗弓)、通称「ベル」と出会います。クレイは彼女にスカウトされ、なし崩し的にダンジョン運営にかかわるようになっていきます。

 物語の見どころは、クレイやベルをはじめとする登場人物たちの非常識っぷりにあります。クレイもベルも、一般的な常識から少しズレた性格をしており、ボケ役にもなればツッコミ役にもなるような勘違いネタが続きます。特にふたりが一緒にいると、誰も止められないボケの連鎖が始まり、そんな時にはドワーフの「ランガド」(CV:楠見尚己)が常識人として良いアクセントになっていました。

ダンジョン運営の裏側

(C)双見酔 / 双葉社・製作委員会の中のひと

 この作品のユニークな部分は、ダンジョン運営の裏側が描かれている点です。たとえば、ゴブリンが農業で育てられているシーンには驚きました。ファンタジー作品では、ゴブリンが繁殖のために村を襲うというお約束の設定がありますが、この作品ではゴブリンが畑で品種改良され、ジャガイモのように掘り出されるという展開があるのです。

 さらに、ランガドのもとで働く小さいゴーレムたちがとてもかわいくて、思った以上にほのぼのとした要素が詰まっています。とはいえ、戦闘シーンでは生死に繋がらないとはいえ、片腕を失う場面など意外にもエグい描写があり、そのギャップもまた作品の魅力となっています。

2期への期待

(C)双見酔 / 双葉社・製作委員会の中のひと

 原作はまだ連載中で、物語には未解決の要素が多く残されています。アニメではクレイとベルが友達になるまでの話で、クレイの行方不明の師匠やダンジョンの謎には踏み込んでいません。しかし、原作が終盤に差し掛かっているようなので、原作完結後に最後まで描いたアニメの2期が制作されることを期待しています。

 クレイとベルのほのぼのとしたやり取りに癒されつつも、続編ではふたりの関係がさらに進展するのか気になりますね。彼女たちの友情が描かれる姿は、観ていて心地よいものでした。

動画版アニメレビュー

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