タイセイの姉・イナの思想は「悪」なのか? 『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』第12話感想

(C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/ERDA

TVアニメ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』第12話「再会」が、6月23日(日)に放送されました。今回は同エピソードを視聴して感じたことや気になったことをお届けしていきます。

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■黒い新幹線に乗るパイロットの正体は…⁉

 前回の第11話では正体不明の敵「アンノウン」と共に現れる謎の黒い新幹線「ファントムシンカリオン」のパイロットが判明しました。その正体は第10話でも仄めかされていた通り、主人公である「大成(おおなり)タイセイ」(CV:石橋陽彩)の姉・イナ(CV:喜多村英梨)でした。敵の正体が自身の姉だった真実を知ったタイセイが戦意を喪失してしまった結果、タイセイと仲間との絆に溝が出来てしまいます。

 商品展開の都合上でタイセイの乗る「シンカリオンE5ハヤブサ」に、さらなるパワーアップというか「シンカ」が待ち受けているのは明かされているため、最終的に仲直りして絆が強固になる、雨降って地固まるような展開が待ち受けているのは確かなのですが、それぞれに解決しなければいけない心の課題があるため問題は思ったよりも複雑です。

■仲間たちとの深まる溝

 冒頭からさっそく「アンノウン」の襲撃が描かれますが、タイセイはシンカリオンを操縦するのに必要な「適正値」が下がって動かせなくなってしまったために基地内でお留守番です。戦いを終えたシンカリオンE6こまちのパイロット「フォールデン・アカネ(CV:小野賢章)」が放った「4人でもやっていけそうだね」の無慈悲なひと言に、深く傷ついたタイセイは超進化鉄道開発機構(通称:ERDA)の基地から逃げるように飛び出してしまいます。

 E7かがやきのパイロット「九頭竜リョータ(CV:土屋神葉)もアカネも腹の虫が収まっていないのかタイセイにツラく当たるのですが、前回の戦いで不在だったために事情が呑み込めていない遠征組の戸惑いっぷりからも仲が良かった普段の様子との違いがうかがえます。

■謎の新機能「グランクロス」とは?

続けてERDA東日本本部司令官でタイセイたちの担任教師の高輪カドミチ(CV:小林親弘)と、同じく部長の浜カイジ(CV:田中正彦)が今後の対処を話し合っているシーンも気になる単語が一杯でした。タイセイの代わりとなる運転士を探す必要性を訴え、運転士としての責任感や機密保持の対応など、組織として当たり前でありつつ非情さすら感じるERDAに、後述する展開もあって視聴者として疑念を抱いてしまうところです。

 前シリーズ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』までの「新幹線超進化研究所」では何かあっても子供たちをかばうような優しい大人たちしかいなかったので、こうした「組織の正しい在りかた」の話からも主人公たちの年齢を上げたことによる深みを感じます。

 そんな中で浜部長が「いざとなったらグランクロスを使うしかないか」と新システムの存在について触れていました。E5(H5)系やE7に設置されているプレミアム席「グランクラス」が元ネタで、前シリーズ『シンカリオンZ』や初代『シンカリオン』では胸部から放たれる必殺技として描かれていました。しかしオモチャの『チェンジザワールド』版E5ハヤブサに胸部が開くギミックがついていないため、今回は違う扱いとなるのではないでしょうか。もしかしたら冒頭でも触れたパワーアップの伏線かもしれません。

■それぞれの心の決着

 最後にはひとりで思い悩むタイセイの元には姉のイナが、リョータには幼馴染の青梅マイ(CV:本渡楓)が訪れ、アカネも兄からの電話によって、それぞれの心の在りかたに決着をつける話です。これまでの話でも描かれてきましたが、何かと本心を誤魔化しがちのリョータに対し「それは違うでしょ」とツッコミができるマイと、ふたりの相性はばっちりです。

 これまでタイセイがしたことによって、どれだけ自分たちが助けられてきたのかリョータに伝えるマイの扱いを見ていると、運転士ではないものの彼女もまた物語の主役なんだなと思わされます。アカネの兄・アサヒも「隣を走っててあげたら」とアドバイスしますが、「支える」とか「引っ張る」じゃなくて「隣を走る」という表現も友達という関係の対等性を示していて絶妙でした。

■再会したイナさんは「悪」なのか……

 そんななか腑に落ちないのがERDAと敵対しようとするイナの目的です。ようやく再会したと思ったら、メタバース上に存在する閉鎖された動物園にタイセイを呼び込み、「ERDAにいては平和は、未来は守れない」とひと言。その手を取りそうになったタイセイでしたが、「何かを守れるカッコいい人になりなさい」と昔のイナが放った言葉を思い出し、差し出された手を振り払います。

 確かに今回もERDAはタイセイを切り捨てることも辞さない判断をしていましたが、少なくても組織として正当性はありそうに感じました。トロッコ問題ではありませんが、個人よりも組織を守る行動をしなければ、さらに多くの人に被害を与えてしまう事態になりかねません。対して失踪前からイナは潰れそうなメタバース動物園を守るために戦うなど個を守る考えが強かったので、今回の暴走もおかしくありません。それにしても、あまりの変わりようなので、今回再会したイナは本人じゃない可能性も捨てきれませんが……。

 タイセイと決裂したイナはERDAに宣戦布告して強硬姿勢、姉弟対決は避けられなそうですが救いはないのでしょうか?

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