昨今、インターネット上やニュースで「転売」という言葉を耳にする機会が増えました。例えば「ガンプラ」や「ポケモンカード」といった商品などで希少な商品を高額で転売する行為がたびたび問題視されています。一方で、「せどり」という似たような活動もあり、両者は混同されることもあります。
しかし、転売とせどりには明確な違いがあり、それぞれの行為が社会や消費者に与える影響も異なります。今回は、この2つの違いを解説するとともに、どのように理解すべきかを深掘りしていきます。
転売と「せどり」は似て非なる行為
いわゆる「テンバイヤー(転売)」と「せどり」は、似ているようで大きな違いがあります。その最たるものが、仕入れ先である市場(マーケット)です。転売は特定のオンラインショッピングや実店舗から、限定品や流通量が少ない人気な商品を仕入れています。転売の対象となった商品は希少価値によって定価以上で売られることが多いですが、転売によって市場が圧迫されず、商品が流通していれば消費者は定価で購入できたことになるため転売行為は市場に価値を与えていません。
一方でせどりは「背取り」が語源で、古書店などで使われていた用語だといわれています。主に中古市場を中心に活動し、仕入れた商品にクリーニングなどして新たに価値を与えて販売する行為を指します。例えば、人気マンガを中古で揃えて、やや価値を上乗せしたうえで全巻セットとして販売したら、それは転売ではなくせどりになります。
せどりの場合は価値を失ってしまった中古品に全巻セットという付加価値を与えて、それによって利益を得ているのが転売との大きな違いです。絶版となった中古本を足しげく古本屋に通って集め、全巻セットとして販売したとしても、それは迷惑行為であると言えません。
なぜ「転売」が問題視されるのか。
現状で「転売」を取り締まる法律はなく、あくまでも転売自体は合法行為になります。そのうえで転売行為が社会全体の利益を無視し、自身の利益だけを追求するゆえに嫌われてしまうのです。転売による買い占め行為によって市場に供給不足が生まれ、不自然に起きた歪みによって利益を得るがために転売行為は悪なのです。
その最たるものが新型コロナウイルス感染拡大時にマスクや消毒液の価格が高騰した例で、一時的な法律による転売行為の禁止まで至った結末は、転売行為が社会全体にどれだけ悪影響を与えるかを如実に示しました。
「転売」は小売りじゃない。
また、いわゆるテンバイヤーに多いのが、転売も小売りの一種で実店舗が卸売から仕入れるのと同じく、自分たちもまた小売りから仕入れているだけだから「転売もまた商品流通の範疇である」という言い訳です。
しかし、こちらも間違った認識であると明確に否定ができます。なぜなら基本的に卸売りは契約しているパートナーを商品売買の対象として一般消費者に売ることがないのに対し、転売は一般小売店から仕入れるため一般消費者もまた同じ流通経路で購入が可能だからです。
なんどもいうように転売によって一般小売店から不当な買い占めが起こり、需要と供給のバランスが狂ってしまうことにより市場に不自然な歪みを引き起こすからこそ転売は悪だと言えます。
- コストコリセールショップは転売じゃない
- なかには卸売り(ホールセール)でありながら、一般消費者でも会員となって商品購入が容易な「コストコ」など例外も存在しています。コストコ会員以外でも商品購入が可能なリセールショップが各地に点在していますが、コストコが卸売業であるためにリセールショップもまた商品流通の範疇であると言えます。
転売根絶のためには消費者意識の変革が大事
転売とせどり、または流通行為は一見似ているようで、その本質は大きく異なります。転売は消費者や社会に不利益を与える行為であり、倫理的にも問題があります。一方、せどりは市場の循環を促進し、消費者に新たな価値を提供するビジネスモデルとして容認されることが多いです。
一般市場から定価で商品を購入して不当に販売価格を吊り上げながら、せどらーを名乗っているのは大きな間違いです。なぜなら、その行為こそ市場から淘汰されるべき、テンバイヤーのあるべき姿なのだから。
また転売が悪というだけでなく、また消費者も両者の違いをしっかりと理解し、商品購入時に転売行為を助長しない選択をすることが求められます。思ったように商品が売れず、資金の流れが滞ってしまうことこそテンバイヤーの撲滅に繋がるからです。健全な市場を守るためには、消費者一人ひとりの意識が鍵だといえるでしょう。